英国プログラム成功に見る日本のスタートアップの成長
3 March 2025
弊社OBMは、過去15年にわたり、日本のスタートアップの海外展開、そして米国・欧州のスタートアップの日本市場参入を多岐にわたり支援してまいりました。
長らく、日本は高い技術力を誇る一方で、スタートアップ分野では世界に遅れをとっていると指摘されてきました。2021年、弊社代表の江口・ベイコン昌子はITPro社のインタビュー "Why does Japan lag behind on startups?" で、日本のスタートアップエコシステムの歴史的背景と近年の支援体制について解説しました。1990年代のブームと比較し、現在の政府機関による手厚い支援（資金援助に留まらないビジネスサポート）、大企業のスタートアップとの積極的な協業、そして経験豊富な投資家の増加を挙げ、「この10年のスタートアップエコシステムは一過性のブームではなく、日本経済の重要な推進力となるだろう」との見解を示しました。
しかし、日本のスタートアップにとって海外進出は容易ではありませんでした。
約10年前、弊社が海外進出支援を開始した当初は、国内市場を重視する企業が多く、英語人材の確保も困難で、応募数は限られていました。その後、海外を目指す企業が増加しても、高度なビジネススキルと異文化理解を兼ね備えたバイリンガル人材の採用は依然として大きな課題でした。
この状況が大きく変化したのは、ここ5年ほどです。海外市場を目指すだけでなく、グローバルに競争力を持つ企業が着実に増加しています。もっとも、「特定の分野に特化した」海外支援プログラムを実施するには、まだ企業数が十分とは言えない状況が続いていました。（ビジネス機会を最大化するには、分野を絞ったプログラムが最も効果的なのですが。）
そのような状況下、今回、X-Hub TokyoとJETROが運営する、東京拠点のサステナビリティ関連スタートアップの英国進出プログラム（2024年9月～2025年2月）をご支援できたことは、大変喜ばしい驚きでした。「サステナビリティ」という特定の分野にも関わらず、多数の応募があり、質の高いスタートアップが集結したのです。共同でプログラムを推進した、サステナビリティ分野で40年の実績を持つケンブリッジ大学CISL (Cambridge Institute for Sustainability Leadership) も、多くの興味深いスタートアップに感銘を受け、最終的な8社の選定に苦慮するほどでした。
選ばれた8社の代表者は、皆、海外市場への強い意欲と、異なるビジネスカルチャーに対応できる柔軟性を持ち合わせていました。各社の技術、製品、ビジネスモデルも、英国や欧州で十分に競争力を持つ可能性を感じさせるものでした。6ヶ月間のプログラム期間中、スタートアップ各社は、多様なメンターや潜在顧客、ビジネスパートナーとの出会いを経て積極的に関係を構築し、チャンスを掴んでいきました。プログラム終盤には、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルも目覚ましく向上し、満員御礼のピッチセッションでは、聴衆から大きな賞賛が送られました。このプログラム期間中に、日本と英国の企業間でMoU（覚書）が締結されるという大きな成果も生まれました。
4年前のインタビューでお伝えした「スタートアップエコシステムは単なるブームには終わらず、スタートアップが日本経済にとって重要な役目を果たすことになるであろう。」という思いを、今回のプログラムを通してより一層強く確信いたしました。
今回のプログラムでお世話になりました皆様に、心より御礼を申し上げます。
今回のプログラムにご参加くださった素晴らしいスタートアップ企業の皆様はこちらです。
Thermalytica - innovative thermal material solutions to help customers lower their carbon footprints.
CalTa - Producing a Digital Twin Platform called TRANCITY
Kinish : A foodtech company producing alternative foods through cutting-edge biotechnology known as plant molecular farming
Think Nature : Supporting clients with an AI reporting service and assessment tools to help businesses monitor their impact on biodiversity
Innophys :A exoskeleton manufacturer working to achieve independent lifestyles for everyone, building robots for people and taking all challenges head on.
Mori Biodiversity Solutions :both fundamental and applied ecology to explore the causes and consequences of biodiversity
SORA Technology : leading use of drone technology in developing countries to transform people’s way of life and realise a safe and prosperous society anywhere in the world.
Digireha: providing a new type of digital rehabilitation tools to children with disability and elderly people.